merlinrivermouth’s diary

https://twitter.com/@nnmwj

日本ネットの正常化として実現可能な政策

日本ネットを正常化するために「法を導入すればいい」というのは短絡的だ。日本ネットの問題は法が介入されないということだけではなく、法が介入するための手段がない、ということだからだ。

例えばたとえネット規制成ったとしても被告への損害賠償額が少なければ、弁護士は依頼を受けないだろう。またそもそもプロバイダーがIPアドレスを保存していたり、開示請求に応じなければ裁判になりようがない。また日本のネットは長く無法地帯であっため、ユーザーの認識にネットは無法地帯であることが当然であると刷り込まれてしまっている。宣伝的見せしめ効果がなければ正常化しないが、日本の非常に少ない司法資源で宣伝的見せしめ効果を生むのは不可能ではないが難しいと評価せざるを得ない。

 

ネット規制としては概ね、刑事罰のスランダーで抑止するアメリカ型、民事訴訟を簡素化したEU型に分けられる。

アメリカ型であるスランダーは加害者被害者どちらが特定される個人で、その場の信用を貶めれば適用される。但し懲役はなく、300万ドル以下の罰金、加害者が支払い不能な場合は3年以下の労役または10年以下の社会保障活動である。日本はアメリカ型をとりようがない。というのもスランダーはネット規制以前に名誉毀損として既にあるものを援用しているだけで、日本にはスランダーがないからだ。

とはいえ日本がEU型を採用するとして、妥当性に問題がある。

①プロバイダーが消極的②司法資源が少ない③日本ネットの悪性度の蔓延が長い

 

①日本のプロバイダーは低コストの管理で、広告宣伝を載せるだけで莫大な利益を出すというスタイルが主流だ。低コストというのは善管理注意義務や管理責任を果たさないということであり、自身で立てた規約を守らせる気がないということであって、むしろ自身の善管理注意義務や管理責任を指摘する訴訟があれば、徹底的に戦う。更にネット規制の声が高まれば、自らの義務や責任を放擲した、低コストかつ最大利益をロビイングに費やす。つまり日本のネット状況が無法地帯であり、適正化の契機がないのは、日本のプロバイダーが主たる戦犯である。

日本のプロバイダーがIPアドレスの開示請求に応じなかったり、IPアドレスの開示請求を拒絶したことに対する訴訟において徹底的に戦うのは、このような理由がある。

加害者のIPアドレスが開示されなければ、被害者は加害者を訴えようがない。しかし明白な不法行為であれば、加害者のIPアドレスを開示しなかったり、加害者のアカウントを削除しないことは行政指導の対象だ。だが日本の主要なプロバイダーは政府と癒着しているか巨大な資本を有しているため、ほとんどの場合、行政指導は怖くない。

ネットを適正化すべしという有権者の広範で強い声がなければ、ネットの適正化は行えない。

 

②日本の司法資源は欧米と比較して非常に少ない。よって弁護士は報酬が少ない依頼を受けることが難しく、裁判所も少額賠償に対応できない。ネット規制なったとしても、ネット上の不法行為の額は極めて少額であるだろうし、しかし同時に訴訟は爆発的に増える。日本の司法資源はそれらに対応できない。

略式裁判所を設けて対応可能にしたとしても、日本の弁護士が依頼を受けるとは思えない。被害者が数万円しか勝ち取れない裁判で、弁護士に十数万円払うだろうか?

日本は本人訴訟が可能であるがために、訴訟費用を敗訴した側に請求できない。しかしネット上の不法行為において、IPアドレスの開示請求は弁護士でないと行えない。つまりいくら略式裁判所を設けても、本人訴訟のしようもない。

だが、IPアドレスの開示請求を弁護士以外が行うことは、より優先されるべき個人情報保護の観点から、あってはならない。

 

③ネットが普及してからこの方、日本は一貫して無法地帯である。もはやユーザーは日本のネット状況が無法地帯であることが当然であり、無法地帯でないネット状況など考えられないだろう。

つまり悪性度の高い腫瘍を長く治療せずに、もはや腫瘍があるのが諸野の前提になっている状況だ。外科手術して取り除くためには、一定期間集中的に取り組むしかない。

だが、日本のプロバイダーが非協力的で、日本の司法資源が非常に少ない現状で、そんな集中的な外科手術なんてできやしない。

 

これらの問題はアメリカ式スランダーを導入すれば全て解決できる。刑事罰であり、要件が妥当かつ単純だからだ。しかし日本の名誉毀損自体の概念規定を変更する必要がある。

結論から言えば、日本のネット状況を適正化するためには、ある程度法の継続性とか妥当性といった、まともな論理を捨てる必要があると私は考える。