日本には550万世帯程度の富裕層、準富裕層がいます。しかし、その実体たるやほとんどが負債漬けです。
債権回収の仕事を手伝ったり、見聞きしていると、都心部の富裕層は年収1500万で負債3億とか、資産20億で負債200億とかです。
そもそも日本はほとんど経済成長しておらず、ITバブルのような技術的革新もひと段落しているので、富裕層が増える見込みは基本的にないのです。
しかし、都心部の富裕層の奢侈たるや凄まじく、ニューヨークの富裕層にさえ引けをとらないでしょう。
これは目に見える現実と数字上の事実が矛盾していることになります。
…実はこれらは全て負債で成り立っています。これから、それを解説しましょう。
ただし、この手が通用していたのは2022年の10月までです。銀行は危ない人には融資していないので、これらはアベノミクス間だけの、過去形です。
以下、アベノミクスの間に誕生した、新興富裕層、新興準富裕層をアベノミクス成金とします。
第一段階 投資の原資のための担保
投資で毎年500万の利益を出すのに1億必要と言われています。富裕層になるためには原資が要ります。元々富裕層ならば原資を作りやすいですが、富裕層が増えたという話なので、アベノミクス成金の原資は借金になります。
担保は、田舎の土地、実家の持ち家、自らの社会的地位などです。金融機関はアベノミクスが始まってから去年の10月まで形式審査でしたから、実際の担保価値はさておき、金を借りれました。
マイナス金利政策ですから、利払いは非常に安く、投資から受ける利益はかなりのものになります。
第二段階 投資会社化
個人融資では借り入れ額に限界があり、個人で投資するにも投資額に上限があります。
ということで、投資会社を設立し、融資を増やしてもらって、原資を増やし、利益を出します。
第三段階 担保のための起業、不動産購入
投資会社でもやはり借り入れ額に限界があります。そこで、より原資を増やすために、小さな会社を複数起業し、担保となる不動産を購入します。
ほとんどの場合、起業の資金や不動産購入の資金も借金です。
第四段階 借り換え
借金はいくつかの例外を除き、利払いだけでなく、いつか元本を返さなくてはいけません。
利払いが低く、いくらでも借入できるということはA銀行から借りた金を返すために、B銀行から借りることもできるということです。
これが借り換えで、アベノミクス成金が「利払いさえしておけばいい」と言っていた理由です。
第五段階 金融機関の最適正審査
これが2022年10月からです。円安による不況と利上げを見越しています。これによりアベノミクス成金は借り換えできなくなりました。
ここで問題になるのは、
①担保価値が実際の価格を表しているか?
②奢侈にどれくらい使っているか?
です。
①担保価値
ほとんどのケースで、担保ははるかに額面割れです。アベノミクス成金はアベノミクスが永遠に続くと思っていたので、不動産を購入したり、起業する時にまともな計算をしていませんでした。
いくらでも金を借りれる前提があれば、そうなるでしょう。
これはつまり元本を回収できないということです。
②奢侈の規模
アベノミクス成金は奢侈の規模でも常識の理解を超えています。
借金を元手にした不労所得を含めた収入限界まで使う人もいれば、奢侈に対してさえ借金する人も珍しくありません。
実際のところ、自身の負債額を把握している人は珍しいです。都心の富裕層を観察すれば、彼らが収入をはるかに超える生活レベルにあることは一目瞭然でしょう。
これは元本を返せないということです。
仮に、アベノミクス成金と同じような事業をしながら、自身の生活レベルが変わらなければ、元本を返さなくてらならなくなっても、利益が相当なもので、老後は安定するでしょう。
しかしそのような人は見たことがありません。
第六段階 信用金庫やノンバンクから借りるか資産の切り崩し
借り換えできなくなれば、自分の収入や資産から元本を返していかなくてはなりません。しかしそれでは、彼らの生活レベルを維持することなどできようはずがありません。
なので、彼らは新たな借入先を探すことになります。それが状況に気付いていない信用金庫や利子が高いノンバンク、果ては自身の収入の源である資産の切り崩しです。
これが彼らの現在地(2023年10月。まだ利上げしていない)です。
第七段階 利上げまたは円安による不況で、一斉債権回収
自己破産できなければ債務弁済協定。
全資産回収。
もちろん、アベノミクス成金の考えていることは違います。彼らは今まで得た影響力をフルに使い、利上げを止めています。
マスメディアの役員も、官僚のほとんども、大企業の役員も、社会科学の学者のほとんども、アベノミクス成金化しているのです。
日本が最悪のスタグフレーションになっても、アベノミクスを続ければ、ほとんど全く可能性がなくとも、彼らも生きる目があります。一方、利上げされれば、彼らは利払いできませんから、破滅が確定してしまいます。
もちろん、その状態が続いてしまえば、ハイパーインフレさえあり得るでしょう。しかし彼らが自らの資産を外貨に変えれば、ハイパーインフレは借金帳消しとなって機能します。
考えてもみてください。彼らは自らの破滅と、自分の勤め先や株主や日本人や日本国、どちらを選ぶでしょうか?
選民意識の塊の彼らが自らを犠牲にすることは考えられません。