まちうどへ
春を呼ばんと
こまちふじ
庭に蕾をつけた小町藤がある。
今にも花を咲かそうと、太陽の下で泰然としている小町藤の佇まいに、僕はその目を離すことができないでいた。
だが、果たして冬を越えられるだろうか?
僕を見かねて、友人が「梅に変えよう」と言った。
僕は数週間悩んで、苦しみ、やきもきしていた。
小町藤は僕の人生を明るく照らしてくれる予感がする。
もう二度、小町藤に匹敵するひとを見つけられないようにも思える。
「僕は彼女を待てる。少なくとも夏になるまでは待てる。だから彼女には自分のペースで試練を乗り越えて欲しい。僕は彼女の迷惑になりたくない」
僕の推理が正しいなんて確証はないのだけれど。
小町藤は単に僕が嫌いなだけかもしれない。
とはいえ、せめて、小町藤から途中経過など教えて欲しいけれど。
一週間に一度は小町藤に声をかけたい、というのは贅沢だろうか?
そもそも小町藤に僕の気持ちは伝わるのだろうか?
想いが伝わるように、そう願うばかりである。
注)小町藤…別名ハーデンベルギア。花言葉は「運命的な出会い」。